こうした傾向を読み解いていくと、欧米流の成果主義とともに導入された目標管理制度(MBO)の発想が強く影響していることがわかる。そして、その根拠となっているのが目標設定理論である。

 それによれば、目標を設定することによって生産性が上がるとされている。しかし、目標ならどんなものでもいいというわけではない。

 そして、「最善を尽くすように」とハッパをかけるよりも、「具体的で困難な目標」を設定するのが効果的だとされている。

 実際、多くの実地研究により、具体的で困難な目標設定をした時の方が、曖昧な目標設定をした時や、容易に達成可能な目標設定をした時よりも、成果が上がるという結果が得られている。

 その理由として、「最善を尽くせ」と言うだけであれば評価をする具体的な基準がないため、「これぐらいでいいだろう」と、つい自分に甘くなってしまいがちだということがある。

 さらには、例えば前年の契約実績が100件で、今年の目標を120件にしたとしよう。結果的に目標を達成できなかったとしても、最初から目標を前年の実績と同じ100件とするよりは、契約数が増える可能性は高いだろう。

 こうした考えが普及することで、高すぎる数値目標を設定する傾向に拍車がかかることになった。

 一方で仕事の質の低下、とりわけ成果として数値化されない部分に関しては大きな手抜きが横行する可能性もある。

 かんぽ生命の不適切な契約・保険料の二重徴収の問題も、営業担当の契約数ばかりが評価され、営業・販売の質の部分が評価されないというところに、問題の根があるように思われる。

 実際、ニュース報道によれば、高い業績を上げている人の多くは不適切な営業手法を用いており、どんな手段を使おうとも営業成績のいい人が評価される仕組みがあったという現場の局員の声もある。

目標設定を極端に高くすることが
横行している

 困難な目標を設定した方が生産性が上がるというのは一理あるし、先述のとおり、多くの実地研究でも実証されてはいるのだが、現状を見ると、この理論を真に受けて、極端に高い目標を設定することが横行しているように思われる。

 元々モチベーションが並はずれて高い人や仕事に自信のある人は、困難な目標を設定されることで燃えるかもしれない。