もう1つの潮流は、近年、スペイン語圏諸国やギリシアなどで台頭してきた、民意を背景として「反グローバリズム(+反米)・反緊縮」を推し進めようとする左派ポピュリズムと呼ばれる流れである。

 自らの債務危機を逆手にとってEUと交渉したギリシアの急進左派連合、ベーシックインカムの導入やEU加盟国の主権を制限するリスボン条約の廃止、国民経済を侵食する自由貿易協定からの離脱などを掲げるスペインのポデモスなどがよく知られている。
  
 サンダース上院議員も左派ポピュリストといわれ、アルゼンチンのクリスチーナ・キルチネル前大統領のように、民間の年金基金や石油会社の国営化、子ども手当、LGBTの権利拡大などの政策で成功を収めた例もある。

右派ポピュリズムに
対抗するには理論的裏付けを

 こうした左派ポピュリズムを、トランプ大統領などによる排外主義的な右派ポピュリズムに対抗する、新たな政治の可能性として高く評価する論客も出てきている。

 ラディカル・デモクラシーの理論家、エルネスト・ラクラウやシャンタル・ムフ氏らがそうだ。

 民主主義国で構造的に生じる文化的少数派の排除の問題を解決するには、多数派に対する文化的闘争を仕掛け、人民のアイデンティティを絶えず再編することが必要だと主張し、左派ポピュリズムを、人々の政治的想像力を活性化し、社会的公正さに目覚めさせる運動として哲学的に意義付けている。

 日本でも、ムフ氏の『左派ポピュリズムのために』とラクラウ氏の『ポピュリズムの理性』の邦訳が昨年末から今年にかけて刊行されている。

 MMTや左派ポピュリズム論が日本で市民権を得れば、「れいわ」は、両者を代表する政党としての地位を確立し、知識人たちから幅広く支持されるようになるかもしれない。

 もちろん、れいわ自身がMMTと左派ポピュリズムについてしっかり研究し、専門家との議論を積み重ね、単に左派にとって口当たりのいい思いつきを並べているだけではないことを証明しなければならない。

 単なる「ポピュリスト」と開き直って、難しい議論を回避すれば、民族感情に直接、訴える右派ポピュリズムに勝つことはできないだろう。

(金沢大学教授 仲正昌樹)