夏は汗をたくさんかいて食欲が落ち、勝手に痩せるイメージがあるが、歳を重ねるにつれ「なかなか減らないな」と感じることも多くなってくるもの。ウーマンウェルネス研究会の調査によれば、夏に痩せる人よりも太る人のほうが約3倍多いという結果も。そこで、工藤内科の減量外来ドクター(内科医)、工藤孝文氏に中年の夏太りの原因と回避策を聞いた。(清談社 松嶋千春)

「汗をかいたら痩せる」
とは限らない!

肥満の人がかく汗に痩せる効果はありません。肥満の人がかく汗は体温調節のためのもので、ほとんどカロリーを消費せず、痩せることにはつながらない Photo:PIXTA

 ウーマンウェルネス研究会が20~50代男女692人を対象に行った「夏季の体重変化」に関する調査では、「太った人」は31.6%、「痩せた人」は10.8%という結果に。いずれの年代も、夏太りした人は夏痩せした人の3倍にのぼり、30代では約4割が夏太りを経験していた。なぜこのような「夏太り」現象が起きるのか。

 工藤氏によれば、そもそも「夏場は汗をかくから痩せる」というのは短絡的な考えで、痩せやすいかどうかは、その人の「基礎代謝」にかかっているという。基礎代謝とは、体が平常時に消費するエネルギー量を指す。

「筋肉量が多いほど、基礎代謝が上がります。基礎代謝が良いと熱が発生し、単純な動きでも脂肪を燃焼しやすくなります。一方で、肥満で汗っかきの人の場合は、厚い皮下脂肪が断熱材の役割を果たし体の熱が体内にこもりやすく、体温調節のために大量の汗をかいてしまいます。体温調節のために汗をかく場合はほとんどカロリーを消費しないため、痩せる効果は期待できません」(工藤氏、以下同)

 基礎代謝量は加齢とともに減る。18~29歳と30~49歳の基礎代謝量を比較すると、男性は1日あたり50キロカロリー、女性は1日あたり40キロカロリーの差が出る。これを1年間の脂肪量に換算すると、男性は2.5kg、女性は2.0kgとなる。おのおのの基礎代謝量・活動量に見合った食生活を送らないと、日々の積み重ねでこれだけ太ってしまうということだ。「夏太り」は、その緩やかな上り坂の兆候といえるだろう。

「『汗をかいているから大丈夫』と過信して、管理がおろそかになっていないでしょうか。単純な体温調節のための汗ではなく、運動などで脂肪を燃焼してかく汗にこそ意味があります。『汗でびちょびちょになるから動きたくない』という気持ちもごもっともですが、運動やカロリーの取り方に気をつけて皮下脂肪を減らしてみると、汗の量も減ってきます」