資生堂は長年にわたって、調香師による香りの創出だけでなく、臭気判定士による体臭の研究を行ってきており、18年の結果は、2017年に発表した「ノネナール(加齢臭の原因物質)が皮膚ガスとして皮膚表面から放出されている」との知見に続く、皮膚ガスについての研究成果であるという。

 クレームを受けたり、辞めたいという部下を説得したりしているとき、有里子さんの体からは間違いなく「STチオジメタン」が発生していたに違いない。

 さらにもう1種類、疲労がたまっているとき特有の汗の臭いもあるらしい。それはおしっこのようなツンとしたアンモニアの臭い。

 原因は、疲れで腎臓や肝臓の機能が低下し、健康な状態であれば体内で分解されるはずのアンモニアが分解しきれずに体内に残ってしまうためと言われている。肉体疲労でヘロヘロになっているとき、有里子さんはアンモニア混じりの臭い汗もかいているわけだ。

 ガスに汗だけではない。心理的ストレスを感じると、口臭がきつくなることはよく知られている。唾液の分泌が通常時の3割減って口の中が乾き、雑菌が繁殖するために口臭が発生しやすくなるのだ。

 というわけで、連日の心理的ストレスと過重労働による疲労が蓄積された有里子さんの体からは、最悪、腐った玉ねぎとおしっこと、乾いた口特有の悪臭が混ざった臭いが発生している可能性がある。

 それは健気(けなげ)に、一生懸命がんばっている証しでもあるのに、臭いというのはなんて残酷なのだろう。

体臭がきつくなった先輩女性を
思い出し、決意を固めた

 有里子さん自身も、10年近いキャリアのなかで、同僚や先輩女性の体臭に戸惑った経験が何度もある。

 忘れられないのは、今とは違う職場にいたときの先輩女性のケースだ。