香港デモPhoto:Anthony Kwan/gettyimages

米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」の注目記事の要点を短時間でまとめ読みできてしまう「WSJ3分解説」。今回は3カ月以上、デモによる混乱が続く香港情勢を取り上げます。香港市民は何を求め、香港政府や中国政府、国際社会はこの状況をどう見ているのか。報道をさかのぼりながら見ていきたいと思います。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

10週目に突入して深刻化する香港デモ

 香港のデモは沈静化する兆しが見えておらず、6月初旬に始まってからついに10週目に突入しています。8月12日にはアジアのハブ空港の一つでもある香港国際空港をデモ隊が占拠。夕方から発着する航空便の全てが欠航になるという事態に発展しました。

 日本人を含む多くの外国人観光客やビジネスで訪れていた利用客が空港で足止めされ、香港のデモはいよいよ中国と香港市民の問題だけではなくなりました。

 長引くデモによる混乱で、誰もが不安と苛立ちを募らせ、我慢を強いられている状況ですが、その中でも堪忍袋の緒が切れそうなのが中国政府でしょう。香港は一国二制度に基づき自治が認められていますが、中国の一部です。なかなか収まらないデモに対して、中国政府の発言が日に日に厳しさを増しています。

●『ウォール・ストリート・ジャーナル』より
>>香港デモに「テロの初期兆候」 中国、厳罰の構え

 米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」によれば、8月12日に行われた中国の香港マカオ事務弁公室の記者会見ではデモについて「テロの初期徴候が出始めている」(楊光報道官)との見解が示され、「『結果を顧みない、常軌を逸した犯罪活動』は『容赦なく』厳罰に処す」という、中国政府が決して事態を静観しないという姿勢が報じられています。

きっかけは「逃亡犯条例」改正への反対

 そもそも、デモのきっかけは何だったのでしょうか。またこれほど長引いているのはなぜなのでしょうか。

 きっかけは中国本土への容疑者移送を可能にする「逃亡犯条例」改正案でした。この改正が行われれば、中国の司法制度によって裁かれる可能性が出てくるため、一国二制度に基づいて認められてきた香港の「高度な自治」がないがしろにされてしまうという懸念が香港市民の間に広がりました。

 デモによって法案の撤廃が訴えられ、結果的に香港行政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は法案の凍結を決めました。

 しかし、香港警察がデモの沈静化を図る過程で、催涙ガスやゴム弾を発砲して多数の負傷者が出たことで、デモ隊は林鄭行政長官の辞任と独立した調査委員会の設置を求めています。

 現在の主なデモ隊の標的は香港行政府と香港警察となっており、「逃亡犯条例」改正に反対するというデモのそもそもの目的からかい離が生じています。