以前から、日本の長いお盆休みを利用して、しばらくは実現できなかった中国南方の視察を実施しようと考えていた私は、香港経由で深セン、広州を訪問する出張計画を練っていた。しかし、香港の治安事情と交通移動に大きな不安を覚えた同僚たちから猛烈に反対され、止むを得ずその出張計画をしばらく棚上げすることにした。

 海外に居住する人間までもが不安を覚えていることから、度重なるデモ抗議が巻き起こした一連の混乱が国際都市としての香港に大きなダメージを与えたことは間違いないと再認識した。

良いものも悪いものも共に
焼かれてしまう「玉石倶焚」の様相

 香港特別行政区行政長官の林鄭月娥(キャリー・ラム)氏は、「デモ隊の一連の極端な暴力行為によって香港は危険な状況に追い込まれている。玉石倶焚の方法では香港は破滅に向かうだろう」と指摘している。

 ここで言う玉石倶焚とは、良いもの(玉)も悪いもの(石)も共に焼かれてしまうということだ。つまり、行政長官はそうした破滅的な結果が招かれるのを強く心配しているのだ。

 さらにその数日後、林鄭氏は「これまでの1週間に発生したことは香港の社会安全を脅かし、長年、自由、寛大と安定を保ってきた香港社会は五労七傷を被り、その回復には長い時間を必要とする。すべてが静まってからは、真心を込めた対話と交流で、社会の対立を解消したい」と述べている。

 五労七傷という見慣れていない表現をあえて使い、香港社会が被った被害と傷跡を強調する林鄭氏の発言には、強い危機感がにじみ出ている。

 市民の分裂と対立も広がった今、秩序ある社会の回復と安定した繁栄の維持は、今の香港にとって急務となる。数日前に、私は別のメディアを通して「(香港)は玉石倶焚の道を走ってはいけない」と警鐘を鳴らしている。