1979年の発売直後、ソニーのウォークマンは既におしゃれなオーディオプレーヤーの枠をはるかに超えた存在だとみられていた。重要なのは「脱出口」になったことだ。  子供の頃、ウォークマンは私を新しい世界に連れて行ってくれた。ウォークマンがあれば、5時間かかる国際線のフライトにも耐えられたし、音楽なしにどこかを歩く時に感じていた孤独感は弱まった。兄弟が一緒にいてもそれぞれが好きな音楽を聞けた。私はア・トライブ・コールド・クエストの「フォニー・ラッパーズ」を暗唱するほど何度も聞いた。物思いにふけり、たまたま肉体があった場所から遠く離れた、とても平和な場所にいた。