上司と部下写真はイメージです Photo:PIXTA

最近の若手に対し、自己主張が薄いと感じたことはないだろうか。その背景には、幼少期に反抗期を経験せず、感情や欲求を抑えて育ったという事情があるらしい。精神科医の筆者によれば、自分の意思が見えにくくなっている彼らには、いま“第三の反抗期”が必要だという。中間管理職は若者の内なる声に寄り添うことで、より円滑な関係構築ができるはずだ。※本稿は、泉谷閑示『「自分が嫌い」という病』(幻冬舎新書)の一部を抜粋・編集したものです。

若者が苦しむ幼少期の呪縛と
やりたいことが分からない病

 私の臨床経験からも、近年、「自分のしたいことが分からない」「何が好きか嫌いか分からない」という悩みを抱える若い世代の人たちが顕著に増えてきていると感じていますが、そういう人たちの成育史をうかがってみると、幼少期からぎっしりとさまざまな習い事や塾通いを強いられてきていることが多いようです。「いや」を禁じられたことによって、心が動かなくなり、もはや自分の気持ちというものがつかめなくなってしまっているのです。

 人間は、反抗の行為によって進化を続けてきた。良心や信仰の名において権力者にあえて〈ノー〉と言った人びとがあったからこそ、人間の精神的発達がありえたのだが、そればかりでなく、人間の知的発達も、反抗の能力にかかっていた――新しい思想を抑圧しようとする当局者や、昔ながらの考え方を守り、変化をナンセンスときめつける権威者への反抗の能力に。

-エーリッヒ・フロム『反抗と自由』佐野哲郎訳(紀伊國屋書店)