突き付けられた条件
DDの調査が終了してから数日後、アンダーソンからアポイントがあり、早苗と吉田は、ブラック・シップスのオフィスがある六本木に向かった。
ミーティングルームは一面大きなガラス張りだった。高層ビルの40階に位置し、地上150mを超える窓から眺める東京の街並みは壮観で、早苗は思わず見とれてしまった。
ドアのノック音が聞こえ、我に返るとアンダーソンが書類を抱えて現れた。
「ハーイ! サナエさん、DDへの協力ありがとうございました。さっそく結論から言いましょう。千葉精密に3億円、投資します」
アンダーソンは右手の指を3本立てた。
「ポ、ポールさん! 本当ですか!? あ、ありがとうございます!」
早苗は、嬉しさのあまり立ち上がった。
「ただし、投資をするにあたって2つの条件があります」
アンダーソンの表情は、笑顔から真剣な投資家の顔になっていた。
「1つ目は、私を千葉精密の社外取締役にしてください」
早苗は伊藤から、彼が投資先の役員に就任し成果を挙げている事を聞いていた。
「わかりました。経営のプロの方にご指導頂ければ、千葉精密はもっといい会社になれると思います」
早苗の言葉にアンダーソンは頷き、続ける。
「2つ目は、投資は新株引受ではなく転換社債で行う。これが条件です」
アンダーソンは早苗の目をまっすぐに捉えて言った。
「テンカンシャサイですか?」