こだわり抜いた寿司で
富裕層のハートをつかんだ

 バンコクを選んだのは、仏教国タイのポテンシャルある市場を見いだしたからでもある。

開店後、ほどなくして「ミシュランプレート」に選ばれた Photo by K.H.

「香港やシンガポールからもオファーがあり、現地を訪れましたが、すでに出尽くした感がありました。インドやインドネシアでも働きましたが、宗教色の強さを実感しました。最後にタイを選んだのは、仏教国なのでハラール(イスラム教の食材制限)がないためでした」

 バンコクの“ジャパニーズレストラン”は2000軒を下らないともいわれている。そのタイもまた「日本料理店を出せばもうかる」といわれた時代は過去のものとなり、今は専門性で勝負する時代になった。そんな中で、「この道一筋」でやってきた見崎さんは手ごたえを感じている。

 北海道の水を使ってコメを炊き、それに同店ならではの赤酢をまぶす。ネタは豊洲から毎日選り抜きの食材を引いてくる――そんなこだわりをどこで聞きつけたか、ある日身元を明かさぬ予約が入った。その後ほどなくして、「鮨みさき」は、ミシュランの基準を満たした料理であることを示す「ミシュランプレート」に選ばれた。

「鮨みさき」を訪れるのは、日本人駐在員だけではない。タイ華僑の富裕層はもとより、王族や芸能人の予約さえも入る。上海の経験をバネにしてバンコクで独立を果たした見崎さんは、「タイの社会に認められて本当にうれしい」と語っている。

「商機あり」と日本中が注目したのも今は昔。2000年代の魅力は薄れ、2010年代には視界の悪ささえも出てきた上海に、「ここが潮時」と腹を決める。日本-中国-東南アジア。日本人オーナーたちの移動を追うと、市場の変遷と時代感が見えてくる。

(ジャーナリスト 姫田小夏)

訂正 記事初出時、第9段落にて「今ではマレー系中国人と日本人の予約で席が埋まる。」とありましたが、「今では中華系マレーシア人と日本人の予約で席が埋まる。」と訂正させていただきました。(2019年8月23日 13:15 ダイヤモンド編集部)