遺族へのアプローチに細心の注意

 身元の公表とは別に、こうした事件ではメディアスクラムもよく批判される。ネットでは「そうっとしておいてやれよ」「そんなに特ダネが必要か。部数、視聴率が欲しいのか」などという投稿も目にする。

 こうした投稿では「マスゴミ」と新聞もテレビもすべてひっくるめて扱われるが、両者は少し事情が違う。

 新聞は強引な取材をすればネットにさらされたり、会社に電トツなどの嫌がらせを受ける。不利益はあっても利益はないから、無理な取材はしない。

 一方のテレビは、お偉いさんが局内で全局の報道をチェックしている。他局が報じ、自局に映像がなければ現場に「どうなっている?」とげきが飛ぶ。

 現場クルーが社員であればそうでもないが、場合によっては下請けのプロダクションだったりすることもある。そうなると、プロダクションは切られないようにするため、多少強引な取材をすることがある。

 ネットでテレビに対する批判を投稿する方は、そうした光景を目にしたからだろう。

 一方「部数、視聴率」についてだが、これはかなり的外れな勘違いと言ってよい。

 特ダネを連発するという理由が、その新聞を購読する動機になるだろうか。そのニュース番組にチャンネルを合わせるだろうか。

 そう、いずれも少し考えれば分かることだ。特ダネは部数増や視聴率アップにつながらないのだ。

 また新聞やテレビの記者は警察が犠牲者の身元を公表すると、遺族を追い掛け回し、無理やり口を開かせるようなイメージを持たれているようだ。

 筆者も学生のころ、そういうイメージを持っていた。そして「記者になっても、そんな取材はしない」と心に決めていた。

 もっとも、当たり前だが普通の青年が「報道」の腕章を着けた瞬間、血も涙もない鬼に変身するなんてことはもちろんない。