今年、日本で激安衣料メーカー、ユニクロが著名なファッション・デザイナー、ジル・サンダーと提携したことが話題になったが、アメリカではもう何年も前から同様の戦略でユニークな商品を売ってきた店がある。ターゲットだ。

1流デザイナーの商品を
驚くような低価格で販売

 ターゲットは、いわばデパート・チェーン。だが、日本のデパートのような高級感はなし。飾り気のない巨大な店舗には、家具から衣服、おもちゃ、化粧品まで、ありとあらゆる商品が並ぶ格安デパートだ。全米に構える店舗は何と1750店。4300店舗を構えるウォルマートには及ばないが、アメリカではどこでも見かける店で、ウォルマートの強敵とされている。

 ただし、安価だけを売りにするウォルマートとは、一線を画している。有名な建築家がデザインした家庭製品、一流のファッション・デザイナーが手がけたファッション・ラインなどを独自で開発し、それを驚くような安い値段で売っている。ユニクロやH&Mがセレブ・デザイナーと組むずっと以前から、「安くても、楽しく、お得」感を演出し、「チープ&シック」を持ち味にしてアピールしてきたのが、ターゲットなのである。

 さて、ここ数年の不景気で、消費者はいわゆる「トレードダウン」と呼ばれる行動に出ていた。「トレードダウン」とは、これまでの購買レベルを落とす行動のこと。高級スーパーで買い物をしていた客は中級スーパーに鞍替えし、中級スーパーの客は格安スーパーへと出向く。デパートでの買い物もしかり。そのあげくに、アメリカの小売業は、価格だけで勝負するウォルマート1人勝ちの様相を呈していた。

 ところが、景気回復期においては、骨と皮だけにそぎ落としたようなウォルマートよりも、ちょっと身もあり楽しさもあるターゲットのような店に、客が集まるだろうと予想されている。そんな気分を反映してか、ここ数ヵ月のターゲット株は上がり調子、2009年第4四半期の売り上げも197億1900万ドルで、前年度比で3.7%増、1株あたりの利益は53.3%増を記録した。

顧客の深層心理に
ぴったり合った店作り

 デパートとしてのターゲットの特徴は、売り上げの5分の3が生活必需品でないもの、つまりぜいたく品で占められているという点だ。その理由は、ターゲットの店をちょっとのぞいただけでよくわかる。