FRBの警告:問題すべてを解決するのは無理Photo:Reuters

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、「室内の象」について話題にするのを避けるように、自身の仕事も容易であればいいとおそらく願っているだろう。

 象たちは、巨大だがFRBの金融政策を声高に批判することはない。スタッフがひそかに象にピーナッツを与えている間に、無理なく自然失業率について語ることができる。

 だが、パウエル氏はドナルド・トランプ大統領と戦わなくてはならない。トランプ氏はFRBを糾弾しており、1年以上にわたり利下げを要求している。また、貿易摩擦激化による米経済への打撃を取り除いて欲しいと願っているのも明らかだ。 23日には中国が750億ドル(約8兆円)の米国製品に対する報復関税を発表し、両国の対立はさらに先鋭化した。

 FRBによる金融引き締めから緩和への転換は、株式市場にとって鎮痛薬だった。これがなければ、貿易摩擦のあおりでもっと下げていただろう。 パウエル氏は23日、国際経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で、貿易摩擦の激化により経済見通しが悪化すれば、利下げで対応する用意があると明確に示した。

 だがその一方で、貿易に関しては、FRBができることには限界があるとも述べた。投資家はこの点を留意すべきだろう。トランプ氏はこの発言を好意的には受け止めていないようで、米国にとってパウエル氏と中国の習近平国家主席のどちらが大きな脅威かとツイッターで問いかけた。

 パウエル氏は、FRBがこの先どう対応を進めるべきか、よく心得ていないということが問題の一つだと語った。例えば、今年に入り、企業信頼感が低下する中でも、雇用と個人消費は堅調を維持しており、米経済が実際、どの程度の緩和策を必要としているのか把握するのを難しくしている。 FRBが来月以降も利下げを継続するには、雇用市場と個人消費も危機的な状況になるとの明確な兆候が必要になるだろう。

 さらに、貿易を巡る不確実性が経済全般へと波及すれば、FRBが経済への打撃に対処する能力は限られる。そもそも金利はすでに低水準にあり、FRBの利下げ余地は限られるとの単純な問題がある。だが、貿易を巡る問題について、金融政策で対応できる範囲にも限度があるだろう。

 FRBのセーフティーネット(安全網)は、投資家が考えているより、お粗末かもしれない。

(The Wall Street Journal/Justin Lahart)