嶋田隆・前経済産業事務次官が、東京電力ホールディングス(HD)の筆頭株主である原子力損害賠償・廃炉等支援機構の特別顧問に就任した。電力業界の急進派からは東電HDの次期会長として推す待望論が出ている。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

東電取締役の経験もある
急進派の中心人物

嶋田隆氏原子力損害賠償・廃炉等支援機構の特別顧問に就任した嶋田・前経済産業事務次官。悲願の原発事業再編を成すために動くか Photo:Diamond

 7月に退官した嶋田隆経済産業事務次官が、8月から原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下、機構)の特別顧問に就任したことが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。政府が出資する機構は東京電力ホールディングス(HD)の筆頭株主であり、今回の人事は東電HD次期会長への布石になり得るものだ。

 嶋田氏は2011年3月の東日本大震災で東電福島第一原子力発電所が事故を起こしたのを機に、電力業界の改革を推し進めてきた急進派の中心人物。東電取締役を務めた時期もあり、急進派を中心に会長就任を推す待望論が出ている。

 主要経済団体幹部は「もともと東電を陰で動かしていたのは、嶋田。会長になって辣腕を振るえばいい」と言い、「時の政権と喧嘩をしてでも、体を張ってやる男だ」と政府関係者は期待を込める。

 経産官僚だった嶋田氏は、旧民主党政権下で11年に設立された原子力損害賠償支援機構(現・機構)の理事兼運営委員会事務局長を経て、12年6月から15年6月まで東電取締役執行役を務めた。

 社内の守旧派を切り崩し東電改革に突っ走り、持ち株会社へ移行させ、発電、送配電、小売りの3事業を分社化させた。東電と中部電力の火力発電・燃料調達部門を統合させた新会社「ジェラ」の発足も主導した。