次世代産業の育成もうまくいっていない。原発輸出の「原発ルネサンス路線」は東芝を経営危機に陥らせることになり、いまや日立製作所や三菱重工の経営の足を引っ張る。世界は、再生可能エネルギーへの転換を成長の起爆剤にと取り組んでいるなかで日本は大幅遅れだ。

 情報通信産業やバイオ医薬産業でも遅れはひどいうえ、ニューライフサイエンスでの「加計問題」やスーパーコンピューターのペジー・コンピューティングの補助金詐欺など、不透明な支援の問題が後を絶たない。

 こうした失敗をごまかし、産業競争力で負けてきた“うっぷん晴らし”をするかのように、官邸主導のあまりにレベルの低い外交に同調しているように見える。

日本企業の水平分業に支障
技術開発立ち遅れる恐れ

 だが通商政策の変質は、より大きな禍根を残すことになるだろう。

 確かに対韓輸出規制によって韓国の半導体企業は一時的には苦境に立たされるが、いずれ代替メーカーを見つけるか、取引先を多様化するに違いない。そして電子素材などの自主開発を加速させるだろう。

 日本が将来、輸出規制を取り下げても、韓国企業がいったん覚えた不信感は消えることはない。97年のアジア経済危機の際に、露光機を独占的に供給していたニコンがサムソンらに現金払いを要求した。

 それを機にサムソンはオランダのASML社の露光機に替えて、ニコンは切られていった。

 今回の規制は、世界の成長の中心はアジアに移っているなか、韓国企業との連携や水平分業で生き残りを目指そうとしている日本の化学産業などの足を引っ張ることにもなりかねない。

 対韓輸出規制3品目の1つであるフッ化ポリイミドは有機EL(液晶ガラスの代わりになる樹脂製フィルム)の素材で、日本の住友化学などがサムソン・ディスプレイやLGディスプレイに供給している。

 JSRや富士フイルムや三菱マテリアルなども、台湾や韓国のメーカーから信頼を得て、高純度のフッ化水素やレジストなどを開発してきた。

 日進月歩の技術進歩のもとで日本企業の素材開発は、韓国や中国メーカーの製造現場の経験やノウハウを踏まえた要求、情報をもとに進められてきた面がある。

 だが韓国企業が日本の素材メーカーに情報を出さなくなったとたん、日本のメーカーの開発力も弱くなる。