理系出身官僚が
霞が関に少ないのも問題

 こうした事態に対して、有田氏は「独立したチェック・処分機関を設けるべき」だと主張するが、そうした動きは今のところなく、学会等の声明や自機関による調査にとどまっている。

 また、国が科学への投資を大きくしたことにも原因の一端がある。

「そもそも昔の研究者は、科学が大好きなオタクや変わり者がなるという感じでした。しかし、今は国からどんどん研究にお金が出るようになって、ある意味、職業研究者が増えた。会社に就職するような感覚で研究者とか教授とかになる。だから研究が第一というわけではなく、仕事として給料が増えるのであれば、少しくらい不正したっていいだろうと思ってしまいがちです」

 研究資金が多くなったのは、科学にとって喜ばしいことだろう。しかし一方で、科学に対する真摯な姿勢が失われる原因にもなっているというのは皮肉なことだ。不正に関しては研究者1人ひとりの倫理観に依拠しているのが現状のようだが、今後の展望について有田氏はこう語る。

「このままだと、スコアやランキングに頼る構造は過熱していくでしょう。日本では研究内容を理解していない文系出身の官僚が予算だけつけて、『さあ結果を出せ』と迫ってくる。理系の官僚が少ないため、科学の視点が政策などに入らないのです。だから、短絡的に数値指標を重視する場面が増えてくる。海外では、理系の博士号取得者が省庁のトップや首相にまで出世できる仕組みがあります。そこも、海外と日本の構造的かつ決定的な違いです」

 多くのノーベル賞受賞で、科学大国だと思われがちな日本だが、現実は不正がはびこり、その未来もとても明るいとはいえないようである。