地震、大雨…被災後の健康管理は「循環器疾患リスク」に要注意Photo:PIXTA

 毎年9月1日の「防災の日」からの1週間は防災週間だ。日本に住む以上、誰しも避難生活者になる可能性がある。そんなとき、どうやって自分の健康を守るのか考えてみよう。

 一般に大規模災害直後から3日間は、圧死や水死など災害と直結する「災害直接死(健康被害)」がほとんどだが、本格的な避難所生活が始まる4日目~数週間以降は「災害関連死(同)」が増加する。特に気をつけたいのは、死に結びつきかねない循環器疾患だ。

 事実、2011年に発生した東日本大震災では長期の避難所生活で、ストレスによる血圧上昇や不整脈が増加。加えて、薬剤不足や塩分過多の偏った食生活、睡眠不足などが複合リスクになり、心不全患者が増加した。

 さらに16年に発生した熊本地震の被災地では、じっと動かないことで四肢によどんだ血液の塊が肺動脈を詰まらせる肺塞栓症や、一過性に胸痛、呼吸困難が発生するたこつぼ型心筋症などが問題になった。

 自治医科大学循環器内科学部門の苅尾七臣教授らが開発した「震災時循環器疾患リスクスコア・予防スコア」によると、被災時特有の発症リスクは、(1)75歳以上、(2)家族の死亡、(3)家屋の全壊、(4)地域社会の全滅、(5)高血圧治療中、または上の血圧が160mmHg以上、(6)糖尿病の持病、(7)他の心血管疾患の既往の七つだ。

 7項目のうち4項目が当てはまる場合は、災害関連死のハイリスク群に相当する。発症予防のためには、できる限り6時間以上の睡眠を確保する、1日20分以上は歩く、塩分を控え、緑色野菜、果物、海藻類を食べる、水分を摂り血栓を予防する、などを心がける必要がある。

 防災セットには循環器疾患の予防を見越して、主食以外に野菜ジュースやフリーズドライ野菜を入れておくとよいだろう。

 しかし現実として、避難所で予防手段を実践するのは難しい。その場合は、医療救護所や巡回診療者に助言を求めよう。場合によっては、降圧剤や抗凝固薬(血液さらさら薬)を処方される可能性があることも頭に入れておきたい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)