私たちはなぜゲームで遊ぶのでしょうか。それはゲーム自体がおもしろいからではなく、プレイヤー自身が直感する体験そのものがおもしろいからなのです。
わかりやすく作ったつもりなのに人気の出ないサービス、盛り上がるよう企画したのに誰も来ないイベント、性能が優れているのに売れない商品、ビジュアルを工夫したのにウケの悪いプレゼン、将来のためにと「勉強しなさい」と言ってもまったくやらない子どもたちetc.
相手のことを思って一生懸命伝えようとしているのに、なぜわかってもらえないのだろうか…。
それは「人が動くしくみ」を知らないからに他なりません。
Twitterフォロワー数26万人以上(※2023年6月現在)のインフルエンサーで事業家のけんすう氏が「今年読んだ本の中でNo.1になってしまった。すごい本。」と絶賛し話題となった書籍『「ついやってしまう」体験のつくりかた』の著者が、人の心を動かし「ついやってしまう」仕組みと手法について、わかりやすく解き明かしていきます。(イラスト/玉樹真一郎、編集/和田史子 初出:2019年9月4日)

「ついやってしまう」体験のつくりかた私たちはなぜゲームで遊ぶのだろうか? Photo: Adobe Stock

脳がゲームを好む理由

玉樹真一郎玉樹真一郎(たまき・しんいちろう)
1977年生まれ。東京工業大学・北陸先端科学技術大学院大学卒。プログラマーとして任天堂に就職後、プランナーに転身。全世界で1億台を売り上げた「Wii」の企画担当として、最も初期のコンセプトワークから、ハードウェア・ソフトウェア・ネットワークサービスの企画・開発すべてに横断的に関わり「Wiiのエバンジェリスト(伝道師)」「Wiiのプレゼンを最も数多くした男」と呼ばれる。2010年任天堂を退社。同年、青森県八戸市にUターンして独立・起業、「わかる事務所」を設立。全国の企業や自治体などで、コンセプト立案、効果的なプレゼン手法、デザイン等をテーマとしたセミナー、講演、ワークショップ、プレゼン等を年60回以上おこなうほか、コンサルティング、ウェブサービスやアプリケーションの開発等を行いながら、人材育成・地域活性化にも取り組む。2011年5月より特定非営利活動法人プラットフォームあおもりフェロー。2014年4月より八戸学院大学・地域経営学部特任教授。2017年4月より三沢市まちづくりアドバイザー。著書に『「ついやってしまう」体験のつくりかた』『コンセプトのつくりかた』(ダイヤモンド社)がある。

人はなぜ、ゲームを遊ぶのか?

なんだか哲学的にも響く問いではありますが、以下がこたえです。(詳しくは拙書『「ついやってしまう」体験のつくりかた』をお読みください)

ゲーム自体がおもしろいからではなく、プレイヤー自身が直感する体験そのものがおもしろいから、遊ぶ。

私たちの脳は、いつだってこの世界を理解したがっています。
そんな脳がゲームを好むのは、ゲームが直感的な理解という体験をもたらしてくれるからであり、プレイヤーに寄り添った体験デザイン――心を動かす体験をつくった結果だといえるでしょう。

一連の体験を通して人々に情報を伝えることを、「直感のデザイン」といいます。
直感のデザインは次の3つで構成されています。

仮 説 「○○するのかな?」と相手に仮説を立てさせる
試 行 「○○してみよう」と思わせ、実際に行動で確かめさせる
歓 喜 「○○という自分の予想が当たった!」とよろこばせる

ゲームはおもしろいから遊ぶのではありません。
「つい思いついちゃった、ついやっちゃった」から遊ぶんです。

私たちの脳はいつだって仮説を探し求め、試行させようとします。

例題を出してみましょう。

絵をご覧ください。

謎の機械の絵(『「ついやってしまう」体験のつくりかた』より)謎の機械
書籍『「ついやってしまう」体験のつくりかた』62ページより
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よくわからない謎の機械が描かれていますが、この絵を見ながらどんなことが頭に思い浮かぶか、ご自身のイメージを確かめてください。