うちのおばあちゃんが
楽しめるゲームを作りたい

第1回の連載で、コンセプトとは「未知の良さ」を実現するものであると書きました。

でも、まだ知られていないことを見つけるなんて、そう簡単にはいきそうにありませんね。何しろ未知ですから、今の私たちにはそれが「良い」ものか明確に見分けるどころか、直感的に「良い」と感じることすら難しいという状態です。

そこで出てくるのが、ビジョンです。「未知の良さ」を見つける助けとなる、ビジョンについて今回は説明したいと思います。

私が任天堂に入社したとき、新入社員同士が集まって、自分がこれからどのような仕事をしたいか、何を成し遂げたいかについて話し合う機会がありました。そのときに私が言ったのは、次のようなことでした。

「うちのおばあちゃんにも楽しめるゲームを作りたい」

私はゲームが好きであり、おばあちゃんが大好きです。ゲームの楽しさをおばあちゃんと一緒に分かち合えないかを、本気で考えていました。説明書なしにみんなで楽しめる間口の広いゲーム作りを得意としている任天堂なら、きっとその願いを実現できるはず。

それが、私の“素直な願い”でした。

こうした願いに気づくことが、「未知の良さ」に触れるためのスタート地点になります。こうした“素直な願い”をビジョンと呼ぶことにしましょう。