謎の機械の正体

おそらくみなさんは、こんなことをイメージされたはずです。
「ハンドルをまわすのかな?」
「コンセントに差し込むのかな?」
「ここを持つのかな?」。

確認しておきますが、僕はみなさんに一言も「この機械はどう使うものなのか考えよ」なんて伝えていません。
でもみなさんは「どう使うか」を考えてしまいましたよね?

この実験は、私たちの脳にある性質があることを示しています。

私たちの脳は、常に「○○するのかな?」という次の行動について仮説をつくりたがっている
この考えかた、実はすでに学問的に整理されています。

直感的にわかるものは、もはやおもしろいのです。

アフォーダンスとシグニファイア

心理学や認知科学で用いられている「アフォーダンス」という考えかたについて説明させてください。

アフォーダンスのもともとの定義は「環境が動物に与える意味」……なんだか難しいので思い切って噛み砕くと、あなたが何かを見たときに思い浮かぶ「○○するのかな?」という気持ちのことです。

ただし、人間のあなたが謎の機械を見れば「◯◯するのかな?」が思い浮かびますが、同じものを犬が見たところで、きっと何も思い浮かばないでしょう。

認識されるもの(謎の機械)と認識するもの(あなたや犬)の両者がそろって、はじめてアフォーダンスは成り立ちます。

くわえてもうひとつ、アフォーダンスとセットとなる考えかたに「シグニファイア」があります。

アフォーダンスとシグニファイア(『「ついやってしまう」体験のつくりかた』より)アフォーダンスとシグニファイア
書籍『「ついやってしまう」体験のつくりかた』65ページより一部抜粋

アフォーダンスを伝えるために特化した情報のことです。

世界一売れたゲームとしてギネスブックに掲載された伝説のゲーム「スーパーマリオブラザーズ」であればマリオの形状や位置・山や草など画面のほぼすべてがシグニファイアとして機能しています。
だからプレイヤーは未知なる冒険へと歩きだすことができるのですね。

そんな体験の根幹となるのが、直感のデザインなのです。

(第4回はこちら)