対象が「困っている時」を狙え
CIAの人心掌握術

 それがあながち荒唐無稽な話ではない、ということは、キヨ・ヤマダという女性の存在が雄弁に物語っている。

  一方で、いくらスパイとはいえ、そんなに簡単に人間を操ることなどできるわけがないのではないかと感じる方も多いだろう。実はCIAには、世界のビジネスマンたちも参考にする「人心掌握術」があるのだ。

 同書によれば、ポイントは「困っていることを探る」ことだという。といっても、弱みを見つけて脅迫をするのではなく、そこを突破口にして、あくまで自発的に協力をしてくれるように仕向けていくのだ。

 サイバー安全保障が専門である著者の山田氏は、冒頭のような新聞記者を籠絡した手口は「情報機関の常套手段」として、最近あったという事例を紹介している。

「しばらく前に、コンピューターに不正アクセスをしてパスワードやクレジットカード番号を盗み出していたハッカーが当局に逮捕された。この人物を協力者にしようと考えた情報機関の関係者は、このハッカーの銀行口座などを調べ、かなりカネに困っていることを察知した。そして、保釈後、ハッカーに接触し、カネを提供するという約束をして、協力者にしてしまった」

 困った時に救ってくれた恩人からの頼まれ事は断りにくいというのは、人間ならば当然の感情だ。CIAをはじめとした諜報機関は、そこを巧みについて協力者に仕立て上げるという。

 あなたがピンチになった時、すっと手を差し伸べてきたその「優しい外国人」は、もしかしたらキヨ・ヤマダの教え子かもしれないのだ。