小説や映画にたびたび登場するハニートラップ。魅惑的な女性の誘惑に乗ったら最後……という例のアレである。フィクションの中では簡単に引っかかる男性が続出するが、実際のところはどうなのだろうか。(取材・文/フリーライター 武藤弘樹)
ハードボイルドの世界のみに
とどまらない?
ハニートラップという言葉は、今日では女性の色仕掛け一般を指すようになっているが、元々は女性スパイが諜報(ちょうほう)活動で行うものとして広まったらしい。確かにハニートラップという言葉には女性スパイがよくフィットする。実在した有名な女性スパイにはマタ・ハリがいて、踊り子出身のこの人は数多くの男性を相手にハニートラップにかけ、その働きぶりが、やや伝説めいて当世にまで語り継がれている。『ルパン三世』の峰不二子にもハニートラップという言葉が似合うが、こちらは色仕掛けが一線を越えることはなく、スパイでなく泥棒である。
スパイにしろ泥棒にしろ、“ハニートラップ”はハードボイルド寄りの概念であり、主に平穏に生活する市井の人々にとっては物語上の産物と感じられるくらい縁遠いものであるが、これが実在するらしいのである。
ハニートラップにハマった、とある男性のエピソードを紹介したい。
欺き、欺かれ、追い詰める
新婚夫婦の情報戦
ハニートラップ自体がそもそも稀有(けう)な出来事であると思われるが、このエピソードにはさらに稀有な要素がもう1つある。それは、仕掛けた側と仕掛けられた側、双方の声が紹介できるという点である。
Aさん(31歳男性)の部下Bさん(29歳男性)とCさん(28歳女性)が社内結婚をした。いきなりABCと人物が出てきてややこしく感じられるかもしれないが、まずAさんが語り手で、彼の部下BさんCさんがいると思っていただきたい。AさんはこのBさんCさんの双方から個別に相談を受ける立場にいた。