専業主婦の年金見直し年金財政の見直しをするなら「専業主婦の優遇」は避けては通れない問題です Photo:PIXTA

先日、厚生労働省が行った年金の財政検証では、改革案を考える上で参考になるオプションが提示された。しかし、最も重要な「専業主婦優遇の廃止」に触れていないのは非常に残念である。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)

財政検証が示した改革のオプション

 厚生労働省が先月発表した年金の財政検証は、「年金が2割減る」などのミスリーディングな報道もあり、話題となった。この点については前回の拙稿「『年金が2割減る』報道は誤り、ミスリードを招いた数字の罠」に示した通り、年金額が減るわけではないので、過度な心配は不要である。

 しかし、少子高齢化が進む以上、年金制度の改革は避けて通れない。そこで、財政検証はさまざまなオプションを示し、改革の議論の参考に供している。

 その大枠の1つは、「被用者保険のさらなる適用拡大」である。零細企業に勤めている短時間労働者等々も幅広く厚生年金に加入させたらどうなるか、という試算である。

 もう1つは、「保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択」である。「75歳まで働いて厚生年金保険料を払い、75歳から年金を受け取り始める」といった選択肢を労働者に与えたらどうなるか、という試算だ。

各オプションとも一時しのぎ
根本的な解決にはならず

 零細企業の短時間労働者を厚生年金に加入させれば、現役世代の払う年金保険料が今より増えるので、高齢者の受け取る年金が増える。現在の年金制度が賦課方式(現役世代が高齢者を支える制度)であるのだから、当然である。