小早川智明社長は予定より2カ月遅れた8月末に櫻井市長の元を訪れ、廃炉計画を伝えた。

 原発は電力会社にとって“利益創出装置”。東電HDの2017~19年度の中期経営計画「新々総合特別事業計画(新々総特)」では、柏崎刈羽原発の再稼働を収益改善の大きな柱の一つに据えていた。1基稼働すると、年間で最大約900億円ものコスト削減につながるからだ。

 6、7号機の再稼働について櫻井市長の首を縦に振らせるためには、小早川社長が1~5号機の一部の廃炉を検討するのはやむを得ない判断だった。

 07年の新潟県中越沖地震以来、10年以上再稼働していない2~4号機は「東電は動かす気は全くないだろう」(業界関係者)といわれていて、1~5号機のうち1基以上を廃炉にするという方針自体は、想定内ともいえる。

 しかし、新々総特では柏崎刈羽原発の廃炉については触れておらず、6、7号機の再稼働を19年度から見込んでいた。計画に盛り込まれていない廃炉方針を示し、再稼働が早くとも20年度にずれ込む見込みとなり、新々総特は画餅に帰す。

 廃炉が想定内であったとしても、実行に移すとなると莫大な費用を計上しなければならない。7月末に全号機の廃炉を決めた福島第二原発は、廃炉完了までに4100億円の費用を必要としている。

 柏崎刈羽原発の一部を廃炉にするタイミングが想定外に早まれば、廃炉に関する費用が上振れし、再建途上にある東電HDの経営に打撃を与えることになりかねない。