筆頭株主である国が求める
「再エネの主力電源化」に沿う
夏の風物詩よろしく、東京電力ホールディングス(HD)が“花火”を打ち上げた。
東電HDは、2020年4月に再生可能エネルギー発電事業を分社化する方針を明らかにした。かねて小早川智明社長は「再エネの主力電源化を推し進め、再エネ事業で2030年度までに1000億円の利益創出を目指す」として、国内外で総規模600万~700万キロワットの再エネを開発する意向を打ち出していた。
分社化はこれを実現するためのものとして、同社は「迅速な意思決定のための責任と権限の明確化」などと狙いを説明している。
もっとも、東電HDが再エネに注力すべく分社化を決めた背景には“お上”の意向が働いているとの見方が、業界関係者の間では根強い。再エネの主力電源化は、政府の第5次エネルギー基本計画に沿ったものである。
なぜ“お上”に忠実に従うかといえば、国が筆頭株主であるからだ。
東電HDは、2011年3月の東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故で、巨額の廃炉、賠償、除染などの費用を負った。
その東電HDを救済すべく、政府出資の原子力損害賠償・廃炉等支援機構(機構)が、東電HDの50%超の株式を取得して筆頭株主になり、東電HDは事実上の国有会社になった。機構は経産官僚を東電HDの取締役に送り込んでいる。
ということもあり、東電HDは政府に頭が上がらず、手足を縛られている状態である。特に政府から“ご指名”を受けて、2017年6月から就任した小早川社長は、「何でもいいから新しいことを打ち出せと、政府からハッパを掛けられている」と東電関係者は明かす。
震災以降に策定されている東電HDの再建計画において、今年度は第3次中期経営計画である「新々総合特別事業計画(新々総特)」の最終年度に当たることもあり、東電HDは再エネ事業の分社化にしろ、真新しさを出すのに必死なのである。