FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が一層の金融量的緩和(QE3)を行なうべきだとの声がある。それが行なわれれば、アメリカ経済や世界経済は好転するのだろうか?

 それを知るためには、これまで行なわれた量的緩和策(QE1、QE2)の効果を見ておく必要がある。

 以下では、まず2007年から08年にかけてのアメリカ金融危機に対してアメリカ政策当局が行なった対策を振り返ったあと、FRBによる量的緩和策の効果を見ることにしよう。これについて理解しておくのは、現在のヨーロッパ金融危機を理解するにも重要なことである。

金融危機と公的資金の注入

 高騰を続けていたアメリカの住宅価格は、2007年夏頃をピークとして、下落に転じた(【図表1】)。これを発端として金融危機が起こった。

アメリカの量的緩和政策(QE)も、<br />実体経済に影響せず

 これは、アメリカの金融業界全体に急速に広がった。借り手の返済能力を疑う金融機関が融資を行なわなくなったため、企業の資金繰りが難しくなり、金融以外の事業も含めて、経済活動がストップしてしまった。

 そして08年9月にリーマン・ブラザーズが破たんし、アメリカの金融システムは危機的な状況に立たされた。