ジョン・モールディン、ジョナサン・テッパー著『エンドゲーム――国家債務危機の警告と対策』(山形浩生訳、プレジデント社、2012年8月)も、この連載で取り上げてきたテーマについて論じている。

 本書が描く世界経済の推移は、つぎのとおりだ。

(1)過去60年にわたって「負債のスーパーサイクル」があった。これは、民間部門が負債を増加させていく過程だ。

(2)それは、2008年のリーマンショックで終わりになった(p21。なお、ページ数は邦訳のもの。以下同様)。そして、これからは「エンドゲーム」になる(p14、p18、p23)。これは、国などの公的セクターが債務を増大させていく過程だ。

(3)しかし、この過程はいつまでも続けられず、いずれ政府が現在のように安い金利では借りられなくなる。ギリシャはその段階に達したが、他の先進国も、いずれはそうなることを免れない。その場合の選択肢としては、デフォルト、インフレ、通貨切り下げがある。先進国政府は、国債の貨幣化を行なっている(p36)。

民間の負債が
増えたのはなぜか

 まず上記の(1)の過程について見よう。

 民間部門が負債を増大させてきた期間を、本書は「60年間」としているのだが、これは長すぎるのではないだろうか?

 ただし、1980年代あるいは90年代以降に、これがアメリカを中心として生じたことは明らかだ。これは、「グレート・モデレーション」と呼ばれた現象だ。ただし、日本ではそうならず、不況が続いた。また、企業の負債も減少し続けた。だから、日本人には理解しにくい。