カーメン・M・ラインハートとケネス・S・ロゴフの『国家は破綻する――金融危機の800年』(村井章子訳、日経BP社、2011年3月)が注目を集めている。

 本書は、過去に起きた金融危機と国家債務危機を、1800年以降を中心とする長期的なデータを(場合によっては1400年代も含めて)蒐集し、分析したものだ。本来は専門書だが、平易に書かれているので、金融や経済に対する予備知識がなくても読める。そして、扱っているテーマは、現在の世界が直面している最大の問題に関するものだ。だから、広く読まれて然るべき著作と思われる。

 ただし、本書の主張に対しては、いくつかの疑問点がある。とくに日本に関する部分がそうだ。それらについて、以下に述べることとしよう。

国家破綻は
よくあること

 本書の主張は、つぎの2点だ。

 第1に、歴史的に見れば、国家の破綻はよくあることだ。銀行危機が通貨暴落とインフレを引き起こし、これを経由して対外債務・対内債務のデフォルトが起こる。これが、800年間の金融の歴史だ。銀行危機は、どんな国にも起こる「機会均等」の脅威であり、「今回は違う」ということはあり得ない(本書の原題“This time is different”は、そこから取られている)。

 理論的に考えると、国内債務によってデフォルトする国は存在しない。しかし現実には、かなり頻繁に起こっている。1800 年以降で、少なくとも70件以上は起きている。そして、この数字は控えめだと著者たちは言う。

 これは、データが示すとおりの事実だ。