そしてC部長は続けた。

「営業部長は私です。ここはもうAさんの部署ではないんです。お願いですからもう来ないで下さい!」
「生意気なこと言いやがって!」

 その言葉に、C部長や部員たちは一斉にAを睨みつけた。するとAはハッと我に返り、うなだれて部屋を後にした。

 Aの件は、すぐにB部長の耳にも入った。早速Aに事情を聞いたが、C部長の「もう営業部に来ないで下さい」という言葉に深く傷つき、自分の行為を猛省しているようだった。その様子を見たB部長はAを気の毒に思ったが、会社の規律上この件を放っておくことはできない。ただ、処遇をどうすればいいのか悩んでいた。

「そうだ、D社労士が今日の午後来るから相談してみよう」

社労士が指摘した
5つの問題点

 B部長はD社労士に、今回の経緯を説明、Aの処遇についてアドバイスを求めた。メモを取りながら聞いていたD社労士は、B部長が話し終わるとAの問題点について以下の指摘をした。

(1)就業時間内に総務部の職務を放棄し、毎日長時間にわたって営業部に出向いていた(職務専念義務違反)。
(2)営業部に籍がないにもかかわらず、勝手に仕事の指揮を執って部内の規律を乱した。
(3)上司であるB部長の複数回にわたる注意を聞き入れなかった。
(4)C部長の許可なくパソコンを閲覧し、乙社の見積額を勝手に変更した。
(5)(4)の件で会社の信用を失いかねないかった。

 説明を聞いたB部長は、ため息をついた。

「Aさんには何らかの処分が下るんでしょうか?」
「可能性はありますね。まずはこの件を専務か社長に報告して下さい」
「わかりました。とはいえ、Aさんは3月まで営業の第一線で活躍されていた方です。私が懲罰するのは気が引けます」
「懲罰委員会で決めますから安心してください。懲罰の有無は就業規則を基に検討することになるでしょう。そしてAさんを懲罰する場合、社長から話をしてもらうというのはどうでしょうか?」
「そうします」
「それともう1点。見積書の作成中に席を外したC部長ですが、席を立つ際は他人にパソコンを操作されないようロックをかけることが必要です。そこを注意しておけば今回のミスは防げたでしょう」