「パリミキ」のブランドで知られるメガネ小売りチェーントップの株式会社三城ホールディングス(本社・東京都)は、積極的な海外展開を進めるグローバル企業の顔も持つ。1973年のフランス・パリで初の海外進出、中国も業界一番乗りで、上海に1号店を開いたのは92年のことだ。その後、2008年には156店舗まで拡大。小売業の外資規制が強い中国で「直営店舗3ケタの展開」、それを可能にしたのは、動きの速い市場に対応するトップの決断力だ。中国在住20年、現地のカリスマ経営者であり続けた加賀純一副社長に聞いた。

台湾系茶店、フランス系スーパーと
「相乗り作戦」でスピーディーに出店

かが・じゅんいち
1954年、大阪に生まれる。77年株式会社三城に入社。92年に上海巴黎三城光学有限公司の董事長、総経理に就任。2009年6月三城ホールディングス代表取締役副社長に就任。2012年2月、三城の代表取締役社長に就任。

 筆者は2002年に同社の上海法人で総経理を務めていた加賀氏を取材している。当時、パリミキにとっては中国進出10年目に当たる節目の年で、中国に直営店50店舗を展開していた。ひとことで「中国でメガネを売る」と言っても、リスクの多い中国では容易ではない。しかし、パリミキの展開にはなぜかスピードがあった。その一つが人脈作りだ。

加賀 当時、中国市場は外資参入に多くの規制を設けていました。本社から出向する日本人は2人、中国人スタッフも集めるのは難しかった。決して人気の業種という訳ではありませんでしたからね。そんな中で有効だったのが「パートナーと一緒に組んで出る」ということ。つまり「相乗り作戦」です。

 当時は、大型スーパーやショッピングモールなどに入店するときは必ず、台湾系の「天福銘茶」さんと組み、一緒に出店をしました。彼らは茶葉の販売で、店舗展開の速度はものすごく速い。彼らの行くところはパリミキも出る、というやり方です。ときどき天福銘茶の台湾人社長を食事に誘っては、次の出店の情報交換をしました。

 フランス系のカルフールとも組みました。ハイパーマーケット業態のカルフールも、中国全土でスピーディな展開をしている。彼らとガッチリ握手して「全国に一緒について行きますよ」と乗せてもらうのです。