ボルトン氏は国務次官補時代にリビアとの交渉に当たり、非核化を達成した実績を誇り、北朝鮮にも「リビア方式」を適用するよう勧めていた。

 リビアはウラン濃縮のための遠心分離器を輸入していたものの、核開発をできる技術や工業力がないため、それを倉庫に放置していたことが後に判明した。

 不要品を放棄することで経済制裁を解除させ、2006年5月に米国との国交正常化にも成功したから、リビアの指導者ムアンマル・カダフィ大佐の方が実際は得をしたのだ。

 だがボルトン氏はそれを自分の成功体験とし、北朝鮮側との会談でもリビアの例を持ち出した。

 2011年にリビア内戦に米国、フランスなどが介入し、リビア政府は倒れ、カダフィ大佐は殺された。

 核開発を止めて殺された指導者の話を北朝鮮にするのは全く逆効果だ。会談決裂後トランプ氏が、ボルトン氏について「最悪だ。賢くない」と言ったのも当然だった。

 トランプ氏はイランの穏健派のハッサン・ロウハニ大統領と会談し、得意の「取引」をしようとしたが、ボルトン氏はそれに反対、「攻撃すればイラン政府はすぐに倒れる」と主張したといわれる。

 イラク戦争前にも彼は同じことを主張。2003年3月の開戦から2011年12月の米軍撤退まで8年9ヵ月のイラク戦争に米国を引き込むことになった。

 この戦争で米軍は死者約4500人を出し、財政危機を招いたが、そのことへの反省は彼にはないようだ。

 トランプ氏はアフガニスタンの武装勢力タリバンが2001年10月以来18年間の米軍との戦いに屈せず、支配地を広げる形勢に終止符を打つため、和解工作を進め、タリバンの代表を米国大統領の公式別荘キャンプ・デービッドに招いて会談しようとした。

 この時も、ボルトン氏は「テロリストを招待するとはもってのほか」と反対し、大統領と対立していたとされる。

大統領選を意識したトランプ氏
政権内で中庸の議論増える可能性

 トランプ氏は強硬論を唱えて大衆の人気を得たものの、来年11月の大統領選挙を前にイラン、北朝鮮、タリバンなどとの交渉の成果を演出したいから、好戦的なボルトン氏は邪魔者だったろう。