フル稼働している非OPEC加盟国の余剰生産能力は乏しい。故に最悪の場合、日量300万バレル前後が不足する恐れがある。
米国のシェールオイルの増産が期待されるが、シェールオイル生産企業は増産に踏み切りにくいという。地政学リスクによる高騰となると、状況の変化で一転、価格が反落する可能性があるからだ。
また、武力衝突の懸念も消えない。今回の無人機攻撃について、イエメンのフーシ派が犯行声明を出したものの、米国は、フーシ派を支援しているイランの犯行と断定している。対イラン強硬派のボルトン氏の大統領補佐官辞任で好転するかに見えた米・イラン関係は、再び緊張が高まっている。
攻撃したのがフーシ派にせよ、イランにせよ、石油関連施設を破壊されたサウジが報復をしないでいるとは考えにくい。
世界最大の石油供給エリアである中東で武力衝突が起き、報復し合う展開になれば、原油価格が100ドルに近づいてもおかしくない。
中東での混乱が長期化すれば、米中貿易摩擦長期化で減速傾向が続いている世界経済の足を引っ張ることになりかねない。
石油元売りは原油価格上昇で恩恵を受ける
中東の混乱が長期化し、原油価格が高値圏で推移すれば、日本企業への影響も大きくなっていこう。その中で、 原油価格の上昇で恩恵を受ける業界がある。JXTGホールディングスや出光興産が代表格となる石油元売り業界だ。
元売り各社には、70日間の「民間備蓄」が法律で定められている。原油価格が上昇すれば備蓄分の在庫評価がプラスとなり、増益要因となるのだ。
多くの業界にとって事態の長期化は憂いだ。今のところは日本への影響は軽微だが、70ドル前後で推移したとしても、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減が懸念される時期に物価上昇圧力が増大することになり、消費減に拍車を掛けるだろう。武力衝突ともなれば世界経済のより一層の減速による輸出減少も加わり、日本経済が腰折れする可能性が高まる。