米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」の注目記事の要点を短時間でまとめ読みできてしまう「WSJ3分解説」。今回は、サウジアラビアの重要な石油施設が空爆を受け、原油の生産がストップしてしまったというニュースを取り上げます。今回の一件を読み解く鍵は、攻撃のタイミングと、同じ動機を持った「容疑者3人」の思惑にあります。(ダイヤモンド編集部副編集長 鈴木崇久)
世界の供給量の約5%に当たる
原油の生産がストップ
日本が3連休を迎える中、衝撃的なニュースが飛び込んできました。9月14日、サウジアラビアの重要な石油施設が空爆を受けて生産がストップしてしまったというのです。
米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」は次の記事で、その概要と、今回の一件が与える影響を分析しています。
●「ウォール・ストリート・ジャーナル」より
>>サウジの石油施設攻撃、長期的なリスク露呈
WSJによれば、今回の攻撃によって「世界の原油供給量の約5%に相当する日量570万バレルの生産が止まった」といいます。
中東で生産される原油の供給リスクといえば、ホルムズ海峡などの海上交通路(シーレーン)への攻撃がかねて想定されてきました。2カ月ほど前にイランが英国のタンカーをホルムズ海峡近くで拿捕したことは記憶に新しいのではないでしょうか。
しかし、WSJによれば、今回攻撃を受けた石油施設があったアブカイクは、「おそらくそれ(シーレーン)以上に重要かつ脆弱だ」といいます。
WSJは次のように、アブカイクの重要性を説明しています。
「2006年にアブカイクの施設で爆発物を積んだ複数の車両によるテロ未遂事件が発生した際には、原油価格が1バレル当たり2ドル以上値上がりした。サウジは港やパイプライン、石油処理施設の防護に年間数十億ドルの資金を投じている」
さらに、記事の冒頭では、「極めて重要な石油施設が攻撃を受けた。世界のエネルギー市場が短期的に動揺することはまず間違いないが、今回の攻撃は長期的にも気がかりな意味を持つ」という見立てを報じています。
問題が長期化する理由として、今回の空爆を仕掛けたのがドローン(無人機)だったことと、犯行を表明しているのがイランの支援を受けているイエメンの武装勢力組織フーシであることが挙げられます。
WSJは、「ドローンやサイバー攻撃などの技術は、おそらくサウジのライバルであるイランの支援を受ければ、フーシ派のような武装勢力でも入手できる」と論じた上で、「今回の攻撃は国家ではない当事者によって行われたとされており、米国やサウジが取れる対応は限られる」と分析。そして、「騒ぎが収まって市場が落ち着いたあとも、今回の攻撃で明らかになった技術的な高度化と大胆さに対する懸念はしばらくエネルギー市場に残ることになるだろう」という一文で記事を締めくくっています。
怪しむべきポイントは
攻撃が行われたタイミング
問題の重大さが分かったところで、ではなぜ今回の攻撃が行われたのかについて、WSJの次の記事を基に探っていきましょう。
●「ウォール・ストリート・ジャーナル」より
>>サウジ石油施設への攻撃、背後に潜む意図とは
記事タイトルにある、サウジ石油施設への攻撃の背後に潜む意図を読み解くには、今回の攻撃を行ったのが誰なのかを考える必要があります。前述の通り、フーシ派が自らの犯行だと主張してはいますが、「攻撃が誰の仕業なのかは依然分かっていない」(WSJ)状況です。
そして、WSJによれば攻撃を仕掛けた「容疑者」は3人います。攻撃の裏側ではどのような力学が働いているのでしょうか?