原油価格の高騰から一転、ここにきて下落傾向が強まっている。世界経済の減速懸念が強まる中、果たして今後の原油価格はどう動くのか。
原油価格は需給の時間差が影響
原油価格を見通す上で、世界最大の価格カルテルであるOPECの動向は無視できない。だが、それ以上に重要なことは世界の景気動向である。
世界景気の現状については、米国が進める保護主義政策が世界景気を下押ししている面もあるが、それ以前に景気が循環的に失速している影響が大きい。
実際、過去20年間を振り返ると、米国経済(ひいては世界経済)は2度のバブル崩壊・景気後退を経験している。1度目はドットコムバブルの崩壊、2度目はリーマンショックだ。
景気動向と原油価格の関係で注目すべきは、これらのショック発生時に原油価格は下落するものの、その直前には原油価格が前年比で大きく上昇している点である。
なぜこのようなことが起きるのか。それは原油の需要と供給の「時間差」があるからである。
以下で具体的に説明しよう。
まず原油価格が下落すると需要が喚起されるため、価格は上昇傾向となる。そして価格が上昇すると生産者は採算性を確保できるので上流部門への投資を行い、増産に舵を切る。
しかし増産しようと思っても直ちに増産できるわけではなく、投資から増産までには数年単位の時間を要する。米国ではシェールオイルが比較的速やかに増産が可能だが、それでも掘削済みの井戸から生産を開始するまでは半年程度の時間がかかる。その間、価格上昇が続くことで需要は減少(レーショニングと呼ぶ)。その後、価格は下落に転じる。
しかし、先述の通り、増産はかなり前から決定しているため、原油価格が下落しても直ちに生産は抑制できず、生産の増加がさらに価格を押し下げることになる。その後、高コストの生産者が生産を終了することなどで徐々に価格の底打ち感が強まっていくが、OPECプラス以外の生産者は基本的に油田を100%稼働させようとするため、生産調整にはしばらく時間がかかることになる。いずれにせよ、こうして価格が下落すると需要が喚起され、再び価格が上昇する。これが一般的な原油価格・増減産のサイクルである。