香港危機で「米韓同盟」は死に体へ、「米台同盟」が現実化する理由
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米中貿易戦争や、韓国文在寅政権の北朝鮮への肩入れ行為など、東アジア情勢からは目が離せません。今後、東アジア諸国の関係はどのように変化していくのでしょうか?今回は、韓国と台湾の問題について、駿台予備学校・世界史科講師の茂木誠氏が解説します。

中国史に名を刻むため、
習近平は台湾統一を目指す

 香港で逮捕された被疑者を中国本土に送還できるようにする「逃亡犯条例」の改正案とそれに反対する香港市民の大規模デモ。習近平政権の意向を受けて対話を拒否し、警察による武力弾圧を命じた林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は9月4日に記者会見し、「逃亡犯条例」改正案の完全撤回を明言しました。

 しかし、市民側が要求する林鄭行政長官自身の辞任、行政長官の直接選挙、警察の責任追及、「暴徒」として拘束されている市民の釈放は拒否し、問題解決には程遠い状況です。今年10月1日の国慶節(建国記念日)は、中華人民共和国の建国70周年記念日にあたるため、習近平政権は国家の威信をかけて「香港の治安回復」を強行するでしょう。この1週間は香港から目が離せません。

 習近平が香港の先に見据えているのが台湾です。中国共産党の歴史観では、「台湾の主権はカイロ宣言に基づいて日本から中国に移ったが、その後、反乱軍である中国国民党政権の占領下に置かれたままで、中華人民共和国の行政権が及んでいない。したがって1日も早く台湾を占領し、祖国に復帰させなければならない」という論法になります。香港返還協定を実現した鄧小平が称賛されたように、「台湾の祖国復帰」を実現すれば、習近平は歴史に名を刻むことができます。

 ところが国民党政府は1980年代に戒厳令を廃止し、その後の台湾は民主化されてしまいました。大統領に当たる総統は国民の直接選挙で選ばれ、親中派の国民党と独立志向派の民進党が交互に総統を出しています。「台湾が反乱軍の占領下にある」という論法はもはや通用せず、台湾の民族自決権は台湾人自身が握っているのです。現在の台湾総統は蔡英文。独立志向派の民進党の総統です。この蔡英文総統が再選をかける総統選挙が、来年1月に迫っています。