独大衆紙「ビルト」は、ドラキュラ伯爵に引っ掛けて欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁がマント姿で2本の牙をむく合成写真を載せた(9月13日)。「ドラギ伯爵はわれわれの口座が空になるまで吸い続ける。彼の任期中にわれわれは何十億ユーロも失った」。
現在出張で欧州にいるが、9月のECB理事会でマイナス金利深掘りと量的金融緩和(QE)再開の決定を主導したドラギ氏に対するドイツ世論の批判がすさまじい。
ドイツ人は貯蓄を美徳とし、かつ持ち家志向が強くないことから家計の債務はさほど大きくない。南欧の家計はその真逆だ。このためイタリア人のドラギ氏が金利を深いマイナス圏に押し下げようとすると、ドイツ人の目には「南欧のためにわれわれは利息収入を奪われている」と映りがちになる。
同紙に掲載されていたコメントも見てみよう。「さらなる緩和策はメリットより大きな弊害をもたらす」(ドイツ貯蓄銀行協会のH.Schleweis会長)「低金利政策の主要な敗者は預金者だ」「金融政策は限界にきており、経済成長は構造改革など他の政策で行うべきだ」(IFO経済研究所のC.Fuest所長)「ECBの決定は金融システムの安定をまひさせる。銀行はビジネスの基盤を失い、預金者は搾取され、老後の蓄えは損なわれる。ゼロ金利(とマイナス金利)は市場経済の終焉につながる」(独キリスト教民主同盟のW.Steiger議員)