ECBECBが世界的な金融緩和競争に本格参戦した。米FRBもさらなる利下げを模索するなか、ドラギ総裁の「最後の大仕事」が始まる Photo:123RF

ECB理事会で利下げ決定
金融緩和競争に参入した欧州

 世界経済の下振れリスクが高まるなか、各国中銀が金融緩和の強化に動いている。

 5月にフィリピン、マレーシア、インド、インドネシアなどアジア新興国が利下げを開始、7月には米連邦準備理事会(FRB)が約10年ぶりに利下げし、8月もニュージーランド、タイ、メキシコ、インドと各国中銀の利下げが相次いだ。

 こうしたなか、欧州中央銀行(ECB)は9月11・12日の理事会で、利下げ、フォワード・ガイダンスの強化、量的緩和の再開、長期資金供給の条件緩和などの金融緩和パッケージを発表し、世界的な金融緩和競争に本格参戦した。

 ユーロ圏では米中貿易摩擦の余波やブレグジットの不透明感の高まりを受け、景気の減速傾向が鮮明となっている。なかでも、4-6月期のドイツ景気がマイナス成長に転落、イタリアもゼロ成長にとどまり、域内で輸出依存度の高い国の減速感が強まっている。

 7-9月期入り後の月次指標が一段と悪化しており、ドイツは2四半期連続のマイナス成長となり、リーマンショック後の世界的な金融危機時以来の景気後退に陥ることが不安視されている。

 それでも、今のところ本格的な景気後退に陥っていないのは、過去数年の堅調な景気拡大の余韻から、雇用環境がしっかりしているのと、賃金が上昇傾向にあることが大きい。だが、ここにきて雇用の改善ペースに陰りも広がっており、外需や製造業部門の冷え込みが徐々に内需やサービス業に波及しつつある。

 ECBは昨年末に新規の資産買い入れを終了、近い将来の利上げを視野に入れ、政策正常化の機会をうかがってきた。ところが、世界経済の変調と各国中銀の利下げ転換を受け、景気の腰折れ回避と物価安定を確保するため、再び金融緩和に舵を切った。