認知症テストを受けさせ
車は売却することを決意

(もしかしたら、母親の認知症は、痛みで思うように動けなくなったことが原因で、痛みがなくなって以前のように動けるようになれば回復するかもしれない)

 男性は、そんな淡い希望も持っている。「逆キツネ検査」ができなくたって、シロウト判断は禁物、とも思いたい。

 だが一方で、認知症が進行した状態で近い将来、痛みが改善して自由に動けるようになった母が、以前のようにバンバン運転しまくるようになったらと想像すると、恐怖で鳥肌が立つ。

 実は慢性痛は、MCIとの関係が深いと言われている。MCIがあると、痛みが強く感じられるようになり、病的になる。

 悩みに悩んだ結果男性は、まずは慢性痛のクリニックの主治医に相談し、認知症のテストをしてもらうことにした。MCIと慢性痛は関係があるので、このテストをすることに不自然さはない。テストの結果、認知症であることがはっきりしたら、免許の返納を主治医の方から勧めてもらい、母の車は売却する。

(生きがいと誇りを取り上げられたら、お袋はどうなるのだろう)

 若いころの、溌溂(はつらつ)と運転していた母親の姿を思い出すと、男性は胸がしめつけられ、泣きそうになる。

(医療ジャーナリスト 木原洋美)