認知症の疑いのある高齢者ドライバーの悲惨な交通事故が絶えない。事故の報道がある度に、「高齢者の免許返納」の是非が議論される。そこで、認知症に詳しい熊谷賴佳・京浜病院理事長、院長に聞いた。(ダイヤモンド・オンライン編集部 山本猛嗣)

私もストレスで
危険な運転をしていた

――最近、認知症が疑われる高齢者ドライバーの交通事故が多く報道されています。その度に「高齢者はさっさと免許を返納しろ」という批判の声があります。

 単純に「高齢だから返納しろ」いうならば、多くの高齢者が反発するでしょう。やはり、「責任を持って運転することができない」、「事故の発生を防ぐことができない」という理由で、免許保有の有無を問うべきではないでしょうか。

 ヒステリックに高齢者を批判してはなりません。むしろ、高齢者の交通事故を他山の石とし、「わが身を振り返る機会」としてとらえるべきです。

 私自身の話をしましょう。

 以前のダイヤモンド・オンラインの取材でも話しましたが、今から6年前、父親がアルツハイマー型認知症になっても病院の経営から離れず、実質的にはとっくの昔から私が病院運営しているのに、それを認めない発言を聞かされ、かなり精神的に参ったことがあります。同じ頃、医師会の副会長に就任し、さらに認知症の講演会にあちこちから呼ばれるようになって多忙を極め、ついに体調不良に陥りました。

 その頃、駐車する際に車をこすることが多くなりました。ちょっとした不注意から車を傷つけるようになり、ついには三十数年間にわたり無事故無違反を通してきたのに、左折可の信号を待たずに左折してしまい、信号無視で捕まりました。家族からは「パパの車は怖くて乗れない」とも言われました。