また、前出のマイナビが行った調査(※)によれば、入社予定先を決めた学生のうち7割以上は、初めてその企業と接触する前までは「第一志望ではなかった」と答えている。つまり、学生は説明会や選考などを通して志望度を高めているのだ。
※2020年卒 マイナビ学生就職モニター調査 7月の活動状況

 その際、重要な指標となりうるのは、人事や若手社員など、就活中に出会った人の“印象”だ。選考を受ける企業を探し、候補を絞る段階では、事業内容や福利厚生など客観的な要素が主な指標となるものの、選考を進んでいく段階になると「そこで会う人」が重要な決め手の1つになってくる。

 社会経験がないこともあるが、どうしても中途採用と比べると、新卒学生は「採用担当や選考途中で会った若手社員の印象に左右されやすい」(マイナビ編集長・高橋誠人氏)。

 企業側も、少子高齢化が進み、これからますます母集団形成に苦労することになる。そうした背景もあり、単純にエントリーする学生の数を増やそうとするのではなく、「接点を持った学生の『志望度をいかに上げていくか』に注力する企業が増えている」(高橋氏)という。実際、選考途中に学生と有望な若手社員を引き合わせるのは、採用の常とう手段だ。

 素材メーカーへの入社を決めた都内国立大学に通うBさんは、OB訪問を通じて社員に会い、働き方や会社の雰囲気が自分に合っていると思ったことが、決め手となった。社員や採用担当に会うたびに企業に対する印象は良くなり、ある種“運命的”なものを感じて就職先を決めたという。現状の内定先には満足しているが、一方で、事業上の競合となる企業は「見ていない」と話す。

 小林氏は、学生視点から見た企業との“ミスマッチ”は「事前期待と実態の相違が原因で起こる」と指摘する。事前に抱いている印象が働く現場の実情と乖離すれば、入社後はそれだけギャップに苦しむことになる。このギャップが引き金となり、辞めてしまう若手社員も少なくない。

 企業は学生を集めるために“いいこと”ばかりを言おうとするのではなく、できるだけ正確な情報を伝えることが大切だ。また、学生も選考中に出会った社員がすべてではないことを念頭に置いて、冷静な視点で情報や社風を精査することが必要だといえるだろう。