中国の経済改革に着手した鄧小平が、一部の人々が先に豊かになっても構わないと述べていたことは、よく知られている。最終的にだれもが豊かになるのであれば、それは共産党指導者である鄧にとって、払う価値のある代償だったのだ。この話、いわゆる「当初の中国の夢」は、長い間立証されてきた。中国の世界への開放は、多数の百万長者と億万長者を生み出した一方で、中国全体をアッパーミドル所得の社会に作りかえた。しかし、まだ豊かになっていない中国人が今後豊かになるのが一層難しくなることを示す兆候は増えている。不平等の度合いは2010年代初めに急激に低下した後、実質所得の伸びが横ばいに推移するなか、再び上昇している。この不平等の広がりによって、中国政府が現在の景気減速に対応することがさらに困難になるだけでなく、アジア地域や世界全体にまで問題をきたす可能性がある。