特売の終了と増税で
負担感が一気に増加
先日、引越しをした友人の家を訪ねるとき、差し入れとしてスコッチウイスキーの「ジョニーウォーカー黒ラベル」を買ったのですが、支払いが2618円でした。10月に入って消費増税になった後の話です。で、「あれ、こんなに高かったっけ?」と思ったのです。
この驚きにはからくりがあって、ちょうど先月も同じ店で「ジョニ黒」を買ったのです。そのときと比べて「結構高いな」と思った理由は、当時は増税前の大セールをやっていたからです。つまり、以前の記憶はそもそも特売のときのもので、しかも消費税が安かった。ところが今回は通常価格で、しかも消費税が10%へ増税された後でした。だから、余計に高く感じたのです。
「それはあなたの個別事情じゃないの?」と思うかもしれませんが、実はこれが特殊な事情とも言い切れないのです。9月は日本中で増税前の駆け込み大セールをやっていたので、行動経済学的に捉えれば、10月の消費増税の影響は、増えた税金分と先月の大セールからの反動分を合わせて、ダブルで効いてくるはずです。
「消費税、高いなあ」と思う人は私だけでなく世の中の多数派なので、この後、消費は目に見えて冷え込み始める可能性が高いでしょう。では、どれくらいの消費が消えてなくなるのか。今回はそのことを、過去の例から類推してみましょう。
消費税が5%から8%へ増税された2014年にも、駆け込み需要とその後長らく続いた個人消費の冷え込みがありました。総務省の家計調査を見ると、増税直前の2014年3月の実質的な世帯支出は前年同月比で7.2%も増加しています。個人消費というものは1ヵ月でだいたい25兆円くらいの規模なので、増税前のセールのインパクトだけで2兆円弱の駆け込み消費が起きたのです。
その後、消費税が8%に増税されたところ、予想通り消費が冷え込んで、その後の1年間の平均で約マイナス5%に消費が減ったのです。金額にして約15兆円。とんでもない規模の節約です。