いよいよ消費税率が10%へと引き上げられた。景気後退懸念のなかでの増税が、国民生活にもたらす影響は小さくなかろう。ただでさえ将来の不透明要因が多い時代に、私たちはどのような生活防衛策を考えればいいのか。経済ジャーナリストの荻原博子氏が徹底解説する。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 小尾拓也)
消費者の不安が前回より
高まりそうな2つの理由
――10月1日から消費税率が10%へと引き上げられました。今回は増税幅が2%であることに加え、軽減税率やキャッシュレス決済時のポイント還元といった対策が実施されるため、2014年の増税時と比べて消費者の不安は小さいのではないかという見立てもあります。
確かにそのような報道もあるようですが、ちょっと違うと思います。結果的に見れば、今回の消費増税が国民心理に与える影響は前回より大きく、景気悪化は避けられないと見ています。本当に、最悪のタイミングでの増税といえます。
その理由の1つは「税率の違い」です。10%への消費増税は過去2回も延期され、その過程で増税をめぐる議論もたくさん行われたため、国民の多くは増税という言葉に慣れてしまい、危機感が薄れているように感じます。なかには、「前回は3%の増税だったけれど今回は2%だから、まあいいや」と諦めに近い気持ちを持っている人もいるでしょう。
ところが消費税率が10%になると、8%のときと比べて「いくら負担が増えたか」という実感がわきやすいのです。たとえば、1万9800円の商品に8%の消費税がかかると言われても、それがいくらかすぐには計算できない人が多かった。ところが10%と言われると、「1万9800円の1割だから1980円……。え?2000円近くも税金でとられるの!?」とすぐに暗算できる。このインパクトの違いは大きいと思います。
こうして「税金をたくさんとられる」という意識が格段に強まる結果、家電1つとっても「大事に使って何年も持たせよう」と節約志向を強め、財布の紐をきつく締めてしまう人が続出すると思います。
2つ目の理由は「景況感の違い」。前回の増税時は、「これから景気がよくなり、給料が上がっていくかもしれない」という期待が、何となく世の中にあった。しかし、今回は全くそれがありません。