かつては安定企業の代表格だったメガバンクも、
いまや数千・万人単位と大量の人員削減を余儀なくされている。
地銀の凋落ぶりは、もはや目を覆わんばかりだ。

なんだかんだと金融行政に守られ、
誰がやっても儲かるような護送船団方式のなかで安穏と過ごしてきた銀行に
市場競争へ立ち向かうまともな力量はない。

いまやAIや仮想通貨といったまったく異質の金融技術が、
銀行業務の独占に容赦なく襲いかかってきているのだ。

どんなビジネスアイデアも、本来は経営者の個人保証や担保がなくても、
アイデアそのものがお金を生み出しそうかどうか、「事業性」を評価して融資されるべき。

その事業性を審査する能力こそ銀行のコアスキルであるべきなのだが、それがない。

いまごろになって事業性評価に基づく融資の拡大を標榜する銀行も増えつつあるが、
これまで担保主義で融資してきたのだから、必要な審査能力は備わっていないのだ。

こぞって消費者金融を手掛けるも、焼け石に水。もはや八方塞がり。
不動産などの担保を確保して融資するという質屋のような銀行業務は、もういらない。

『もう銀行はいらない』を上梓した経済評論家・上念司氏が、
確かな見識と舌鋒鋭い指摘で、銀行業界を“筆刀両断”する。

『もう銀行はいらない』上念司 トークイベント&サイン会 開催!
高知 蔦屋書店 3階 Kids Park CHUCHU 2019年 10月23日(水) 19時~

Photo: Adobe Stock
上念 司(じょうねん・つかさ)
1969年東京都生まれ。1993年中央大学法学部法律学科卒業。在学中は日本最古の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年より、経済評論家・勝間和代と「株式会社監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任。現在は代表取締役。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一名誉教授に師事し、薫陶を受ける。リフレ派の論客として経済政策、外交防衛政策など著書多数で、『もう銀行はいらない』(ダイヤモンド社)、『経済で読み解く日本史 文庫版五巻セット』(飛鳥新社)、『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』(講談社+α新書)などがある。テレビ、ラジオなどでも活躍中。

【前回】からの続き――

悲しみに暮れているとき、一つのアイデアが浮かびました。
「もしかしたら、あの銀行なら話を聞いてくれるかもしれない」

あの銀行とは、私を2004年に門前払いしたのとは“別の”メガバンクのことです。
そのメガバンクは当時、法人登記さえしていれば、口座の新規開設を認めてくれたのです。

おそらく私が個人事業主だったときの口座をその銀行に置いていて、そこから個人が法人を設立する「法人成り」だったということが関係していたのかもしれません。

いずれにしても、あれから12年ずっとおつき合いがあるのだから、何とかなるだろう。
少なくとも、使えない制度融資を頑なに勧めてきた、あの信金担当者よりはマシなのではないか。
そう思ったのです。

私は早速、そのメガバンクに電話して融資担当者につないでもらいました。
「先ほど信金と話したのですが、一見さん扱いで門前払いされました」と伝えると「社長、大変でしたね」と融資担当者は同情的です。
「よし、これはいけるかもしれない」と期待しました。

そこで張り切ってジム事業の今後の展開などについて話し始めようとした矢先、私の話を遮るように、その担当者はこう言いました。

「ご安心ください、うちにはいいプランがあります。制度融資です」

私は椅子から転げ落ちそうになりました。
「バカヤロー、さっきと同じじゃないか!」と言いたい気持ちをグッとこらえ、丁寧に電話を切りました。
まったく話になりません。

融資実績がないと、銀行や信金はこんなにも塩対応なのか。
いくら事業が順調で、いくら稼いでも、中小零細企業にはこんなにも冷たくて、ゴミ扱いするのか。
これが私の率直な感想でした。

こうしたことがトラウマとなり、私はずっと銀行融資に背を向けて、無借金経営を続けてきたのです。

後で知ったことですが、銀行はコネがあれば、かなりいい条件でお金を貸してくれるそうです。
私が顧問を務めているある教育系ベンチャー企業は、株主である投資ファンドの紹介で銀行融資をオファーしたところ、制度融資より1%も低い金利で即座に融資が決まったそうです。
しかも、無担保で、中小企業向け融資にありがちな経営者の個人保証もなし。

この株主のファンドの投資先は十数社あり、銀行融資を受けている会社も多く、銀行にとってみれば大口顧客です。
その大口顧客の投資先であれば、私のような扱いは受けないというわけです。

この話のポイントは、信金や銀行の融資は事業の中身や将来性よりも、「誰の紹介か」ということが重視されているという点です。
いったい、いつの時代の話なのかと愕然としたのは言うまでもありません。

【次回へ続く】