地方の人口減少や本業不振の深刻化。「断末魔」という言葉が最も適するといえるのが、全国に散在する地方銀行だ。「銀行・証券断末魔」特集(全5回)の第2回では、独自試算の“余命”ランキングや、就活人気企業ランキングを基に、地銀の苦境をあぶり出した。(ダイヤモンド編集部 田上貴大、中村正毅)

有力行の傘下入りに店舗統廃合
“縮小路線”を敷く地銀の苦境

 どうしたら、地域に自分たちの銀行の「看板」を残すことができるのか――。今から数年前のこと。ある地方銀行の幹部は、自らの銀行の業績悪化を目の当たりにし、ありとあらゆる生き残り策を思い巡らせた。

 熟慮の末に、一つのアイデアを思い付いたその幹部は、遠方にある別の有力地銀に赴いた。そこで持ち掛けたのは、表向きは単なる業務提携。だが、それだけではない。業務提携の先の、相手からの出資を受け入れる資本提携が真の狙いだった。早い話が、よその軍門に下るというかたちでの経営統合である。

 本来、統合・合併の最大の効果は、コストシナジーだ。本部人員の整理などに着手することができ、収益力の改善が見込める。近年、長崎県や新潟県、そして三重県において、次々と同一県内の地銀が合併を決断したのは、こうした理由があるからだ。

 しかし、一方で、この県内合併は“副作用”も少なくない。新しい地銀に生まれ変われば、地元で親しまれている銀行名まで変わってしまいかねない。その上、経営統合した先に待っているのは、「旧行同士の主導権争い」(地銀関係者)というあつれきだ。ましてや、のみ込まれる側は、新しい銀行の人事面でも不遇をかこつことにもなる。

 冒頭の地銀幹部は、このまま指をくわえていたら、収益の悪化がさらに進み、近隣の地銀との厳しい再編劇に巻き込まれるとの懸念があった。それ故に、あえて遠方の有力地銀の傘下に入るという策を講じたわけだ。

 実際、県境を越えた遠方統合は、2003年に北海道銀行と富山県の北陸銀行がほくほくフィナンシャルグループ(FG)という持ち株会社を立ち上げるなど先例もある。

 ただ、この地銀幹部もほくほくFGの事例を参考にしたが、ほくほくFGも本部機能をまだ別々に残すなど提携の深掘りができておらず、「シナジーが見えない」という認識があった。だからこそ、遠方連携の中でも有力地銀に“投降”するという選択肢を取る覚悟を決めた。

 もしかしたら、 “おんぶに抱っこ”と後ろ指をさされるかもしれない。それでも、子会社として配当金を上納する代わりに、有力地銀が持つ金融商品の販売ノウハウやデジタル技術に関する知見といった、何物にも代え難い果実を得ることができる。

 その上、遠方の地銀同士の経営統合ならば、わざわざ銀行名を変えることはないはずだ。「地域に名前を残して営業活動ができる。これ以上、何を望むというのか」。

 そう決意し、この地銀幹部は有力地銀と交わした“密約”を首脳陣に持ち掛けた。しかし、頭取をはじめとする他の幹部は、この遠方連携の有益性を理解しなかった。結局、この幹部が描いた“ウルトラC”は、実現することはなかった――。

 これほどまでの統合案を、地銀が検討しなければならない状況に陥っているのはなぜか。それはひとえに、本業不振がより深刻となり、構造不況が極まっているからだ。

 背景には、地方の人口減少や企業の資金需要の低下など幾つもの要因がある。その中で最たるものは、長引く低金利環境だ。日本銀行が13年に打ち出した異次元の金融緩和や、16年1月に導入が決まったマイナス金利は、確実に地銀の収益機会をむしばんできた。

 そもそも銀行は、集めた預金を企業に貸し出す融資事業が本業中の本業だ。しかし、低金利環境が続き企業から受け取る利息収入が下がれば、この伝統的なビジネスは “じり貧”にならざるを得ない。

 こうした融資事業の利益を核とした、一般企業における営業利益に当たる「コア業務純益」は、毎年減少の一途をたどっている。特に、マイナス金利による影響を受け始めた17年3月期からは、一段と大きな落ち込みを見せた。

 収入が増えない以上、今の利益水準を維持するためには、コストを削るしかない。多くの地銀はようやく重い腰を上げて経費削減に取り組み始めた。銀行の二大コストといえば人件費と物件費だ。人件費は採用抑制による従業員数のカット。RPA(事務作業の自動化)などデジタル化の進展が後押ししている。物件費は店舗の統廃合が最も大きな効果を発揮できる手段だ。

 店舗の統廃合については、「店舗を閉めれば顧客の利便性を損なう」という大義名分を掲げて、足踏みをしていた。何よりも不安だったのは「信用不安が起こること」(第二地銀幹部)だ。

 だが、実際に店舗を閉めても「近隣のATMを使ってもらうように誘導したらクレームは一件も来なかった」(関東地方の地銀幹部)と杞憂に終わることも多い。もはや地銀にとって、人員縮小や店舗の統廃合などの“縮小路線”は不可避な情勢だ。