参加者全員が製造業の経営者になり、
2日間で「5年分」の経営を体験するボードゲーム

 「川上さんのお知り合いなんですね? 川上さんにはいつもお世話になっています」
 女性は笑顔で早苗に名刺を差し出した。

 「ヘルシーアイス 代表取締役 滝川美樹」と書かれている。

 美樹は、豆乳を使用した低カロリーのアイスクリームやフルーツのジェラートをインターネットで販売する会社を経営している。川上とはマネジメントゲームをきっかけに知り合いになり、経営のアドバイスをもらっているとのことだった。

 開始時刻の9時半になった。

 「おはようございます! マネジメントゲームへようこそ!」

 マネジメントゲームは、参加者一人ひとりが製造業の経営者になり、2日間で「5年分(5期)」の経営を体験するボードゲームだ。

 仕入、製造、販売だけでなく、資金調達、設備投資、人員採用、広告、研究開発、教育など、実際の経営者のように会社の様々な「意思決定」を行っていく。

 ゲームは「資金繰り表」を記入しながら進める。手許の現金残高に応じた「意思決定」をする必要があり、キャッシュ・フロー感覚が身に付く。ゲーム終了後には決算書を作成し、ゲーム中に行った意思決定の結果が、B/S、P/Lに表れる。

 得意先の倒産、倉庫火災、不良在庫の発生といった「アクシデント」、独占販売や研究開発の成功といった「ラッキーな出来事」など、ビジネスの中で起こりうる事象が織り込まれていて現実的な感覚で楽しみつつ、経営と会計が学べるとのことだ。

 「それでは、説明はこれぐらいにして、さっそくゲームを始めていきましょう!」
 川上の熱い説明が終わり、いよいよ1期目がスタートとなった。

相馬裕晃(そうま・ひろあき)
監査法人アヴァンティア パートナー、公認会計士

1979年千葉県船橋市生まれ。
2004年に公認会計士試験合格後、㈱東京リーガルマインド(LEC)、太陽ASG 監査法人(現太陽有限責任監査法人)を経て、2008年に監査法人アヴァンティア設立時に入所。2016年にパートナーに就任し、現在に至る。
会計監査に加えて、経営体験型のセミナー(マネジメントゲーム、TOC)やファシリテーション型コンサルティングなど、会計+αのユニークなサービスを企画・立案し、顧客企業の経営改善やイノベーション支援に携わっている。年商500億円の製造業の営業キャッシュ・フローを1年間で50億円改善させるなど、社員のやる気を引き出して、成果(儲け)を出すことを得意としている。
著書に『事業性評価実践講座ーー銀行員のためのMQ会計×TOC』(中央経済社)がある。MQ会計を日本中に広めてビジネスの共通言語にする「会計維新」を使命として、公認会計士の仲間と「会援隊」を立ち上げ活動中。