レビュー
2019年8月10日、瀧本哲史氏が亡くなった。享年47歳。あまりにも早すぎる死だった。
瀧本氏は東京大学法学部を卒業後、大学院を経ずして研究科助手に抜擢された傑物だ。それほどの能力があるのなら、そのまま学者として大成することもできただろう。しかし彼はその後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社することを決断し、日本交通等の改革で手腕を発揮。独立してからはエンジェル投資家として活躍しつつ、京都大学客員准教授という立場から「起業論」を説いた。
そんな瀧本氏が、私たちに贈る「武器」として書き上げたのが本書『僕は君たちに武器を配りたい』だ。彼の目には私たちの持つ「武器」が、まさに竹槍の如く映っていたのだろう。生前彼は星海社新書「軍事顧問」という肩書を名乗っていたが、それはけっして伊達や酔狂ではない。資本主義という戦場を生き延びるための戦略と戦術を、私たちに伝えたかったのだ。
2011年に書かれた書籍ということもあり、中にはいま読み返すと「あの頃とは社会情勢が変わった」と思わされるところもある。たとえば日本における有効求人倍率は改善されてきているし、米経済界では「株主第一主義」に対する見直しも始まった。