マッキンゼー・アンド・カンパニーで20年にわたってパートナーを務め、新刊『いい努力』が話題の山梨広一氏と、同じくマッキンゼー出身で、新刊『ミライの授業』が話題の瀧本哲史氏。マッキンゼーをよく知る二人のディープな対談シリーズ。今回の後編では、「マッキンゼーがマッキンゼーである理由は何か」を中心に、その仕事への徹底的なこだわりが語られます。(構成:古賀史健、写真:大坪尚人)

【前編「マッキンゼーで活躍する変人、活躍しない秀才」はこちら】

 

マッキンゼーは「仕組み」がすごい?

瀧本 他のコンサルティングファームの人たちに話を聞くと、みんな口を揃えて言うのが、「とにかくマッキンゼーは仕組みがすごい」ということです。人材育成から評価システム、クライアントへのフォローまで。そのあたり、山梨さんはどう思われますか?

山梨 人材育成の話で言うなら、もちろんマッキンゼーにはグローバル単位、リージョナル(地域)単位、そしてそれぞれの国単位で、トレーニングのプログラムが整備されています。ここはかなりシステマティックです。

 でも、いちばんの学びは、本人たちの「観察」にあると思います。たとえば何人かで集まって世間話をしていても、そのうち誰かが立ち上がって、ホワイトボードにあれこれ書き込みながらカンカンガクガクの議論がはじまりますよね?

瀧本哲史(たきもと・てつふみ)    京都大学産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門客員准教授、エンジェル投資家。東京大学大学院法学政治学研究科助手、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、現職。京都大学では、起業論を教えると共に、産学官連携、高大連携、国際連携のプロジェクトに参画している。主な著書に『僕は君たちに武器を配りたい』(ビジネス書大賞2012受賞)、『武器としての決断思考』(星海社新書)、『戦略がすべて』(新潮新書)など。 最新著に『ミライの授業』(講談社、2016年)。近時は、プライベートエクイティ投資会社、日本成長投資アライアンス株式会社で、日本の中堅企業成長支援を通じた、日本経済の新しい「ミライ」の創造に取り組んでいる

瀧本 はじまります(笑)。

山梨 そこでリーダー的な立場にある人間が、どうやって議論を引っぱっていくのか、どこに課題を見つけ、どう解決していくのか。雑談の中からもそういうエッセンスを学ぼうとする、本人の意欲が問われる職場ですね。あとは、よく言われる「so what?」。

瀧本 はい。ちょっと語られすぎて誤解も多い言葉ですが。

山梨 つまり「それで結局、どうするんだ?」「それで結局、お前はどう考えているんだ?」を突きつけられる文化が根づいている。

瀧本 なにかのデータを持ってきて、「こういう情報があります」と報告するだけでは意味がないんですよね。

山梨 たとえそれが希少性の高い情報であっても、「それできみはどう思ってるの?」「きみはどうしたいの?」までが問われる。マッキンゼー出身の安宅和人さんが書かれた『イシューからはじめよ』という本がありましたよね。

瀧本 あれはいい本です。

山梨 まさに彼が書いていたとおりで、最初に考えることは「イシュー」の発見であると。「なにが課題なのか?」を探すことであると。そして課題がえらく大変だったり、難関だとしても、絶対にへこたれない。というのは、「お前たちの仕事は、課題を解決することなんだ」と刷り込まれているわけです。

瀧本 いわゆる「so what?」的な問いによって。

山梨 そうです。逆にいうとコンサルタントの仕事というのは、課題があってはじめて生まれるものなので。課題がどんなに大きなものであっても、「それをどうやって解くか?」を考える。このふたつ、課題の「発見」と「解決」を意識する訓練は、日常的に続けていますよね。