習政権は2013年11月の第18期三中全会で、市場経済のさらなる発展や国有企業の改革など大胆な改革を打ち出したが、なかなかうまく進まず、党がすべてを管理するという考えのもとで、経済政策でも党の影響力が強くなり、習近平の影響力が大きくなった。2015年の第18期五中全会後から、中国の経済政策はマルクス主義重視の傾向が強くなり、経済政策の基調は「五つの発展理念(革新、クリーン、開放、調和、共有)」に沿って策定されている。

習近平が経済分野に取り入れる
毛沢東の「6つの思想」

 アメリカとの貿易摩擦の影響もあって、中国経済はやや減速気味になっている。それを受けて中国は、一定の成長を確保するために対策を次々と打ち出している。習は経済分野においても、毛沢東の要素を取り入れている。

 第一に、「自力更生」路線重視という点だ。自力更生は毛沢東時代の“鎖国政策”を連想するが、そうではない。毛沢東は外国との交流の重要性も説いていた。ただ、当時は西側の封じ込め政策もあって、対外交流は限られていた。

 毛沢東は外国のやり方に盲目的に従う傾向に警戒感を示していた。中国は建国当初ソ連一辺倒で、ソ連のやり方を真似ていたが、毛は会議で「私は3年間卵を食べられず、鶏スープを飲めなかった。ソ連のある論文に卵、鶏スープは食べてはいけないと書いてあったからだ」と述べ、ソ連への教条主義傾向を批判した。

 改革開放以降、中国は生産力の向上に必要な技術や管理ノウハウを資本主義国から導入し、外資を積極的に誘致した。中国は急速な経済発展を遂げた一方で、自前の技術などの発展が遅れた。現在、習政権は「自主イノベーション」を強調し、中国独自の技術の育成を重視し、イノベーション環境の整備に力を入れている。

 第二に、均衡重視の政策を行うという点だ。改革開放は「富める者が先に豊かになる」という「先富論」のもと、沿海地域が経済発展を遂げたが、内陸部は発展から取り残され、富める者とそうでないものの格差が広がった。

 鄧小平の改革開放は、最終的には「共同富裕」を実現すると述べているが、「不均衡を前提とした」政策だった。それに対し、毛沢東は均衡を常に重視しており、不均衡な状態になったら、その是正に努めた。「十大関係論」も毛の均衡重視の考えに沿ってまとめられている。