フィリピンで今、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染が世界のどこよりも急速に拡大している。HIVは後天性免疫不全症候群(エイズ)発症の引き金となるウイルスだ。国連合同エイズ計画(UNAIDS)によると、同国の新たなHIV感染者数(推定)は2013~18年に2倍以上に増え、特に若い男性にまん延している。HIV推定感染者数が世界全体では減少傾向にある中、フィリピンでの感染拡大は際立っている。原因を特定するのは容易でなく、専門家が一定の臆測を交えるのは避けがたい。だが公衆衛生に関する活動家らは、主に出会い系アプリの普及が背景にあるとみている。それが、伝統的な社会規範のために避妊具の使い方や責任ある性行為について人々が学ぶ機会のない同国で、不特定多数との性交渉が広まる原動力となっている。